★TPPのお話★

今日は少し最近話題の農業のお話です。
一昨日もTVでTPP問題が話題になっていましたが・・・そのことについて!
ここからは私論です、チョッと長くなってすみません(異論も多々あるとおもいますが)
まずは、この問題を語る前に論点を整理しないといけないかと思います。いま農業現場の正確な実態の把握、これまでの農業政策などの問題点がごちゃ混ぜになり、一般の人の認識に随分誤解をあたえているように思います。
★TPPのお話★

日本農業の正確な実態と食料自給率の関係はというと・・・まず、皆さんが思い違いしているのは、日本農業生産額は世界第5位であり押しも押されぬ農業大国だということです。更に農水省のいう自給率はカロリーベース数値であるため、自国生産量及び輸入量での誤差が生じています。この自給率には毎日廃棄される食物や自家生産分はカウントされませんし、農家の直売品、国内飼育された畜産でも外国産飼料を与えたものは国産扱いではありません。大規模畜産農家において生産した食肉はその時点でカウントされないという大きな矛盾まであります。それらをカウントすると生産ベースでいまでも実際の自給率数値は50%をはるかに超えると思います。現実に畑で放棄される農産物や規格外の品(これらもカウント外ですが)は未だに大量にのぼりますし、私達のお茶をはじめコメも必要以上の備蓄や在庫がされ農産物価格の低下に拍車をかけていますし、国内食料は異常なくらい有り余っています。足らずは穀物類なのですが、しかし、国内業者が輸入品を多用するのは国産の品質が劣り使えないという事情にもよります。品質の向上により国内産消費も生産も数値が上がる余地はあります。将来の自給率予測(これも専業経営農家の著しい生産伸び率は公表していません)はともかく、現状では政府の発表する数値や内容はかなり歪曲されていることも事実です。この数字のまやかしには、肥大化したJAの都合(農家における中間所得層の囲い込みや独占市場の確保)や農水省の既得権益のための嘘が隠れていることも承知しないといけません。むやみに消費者の不安をあおるようなマスコミや国の情報操作には時々憤りを感じます。推測するに日本農業があくまで弱い立場を強調しないと国の農水関係予算と仕事はなくなってしまうのではないかと。

それと高齢化による農業者人口の減少による生産量の衰退を心配しますが、現実にはこの事由による農作物生産量減少(耕作の放棄地は確かにしていますが)は微々たる物で、今では国内農産物総生産量の7割は1割の農業法人や大規模農家によります。加えて1ヘクタール未満の8割の兼業農家の農業所得は農家の生活に影響を与えるほどの数字ではありません。コメですと概算金額で年間所得20万円ほどでしょうか?例えば、市役所に通う兼業農家がコメの値段に生活レベルを左右されることはほぼありません。また、100ヘクタールを越え年商1億以上の売上を挙げる農家には十分外国産との競争力の余地があります。高齢化による農業放棄地の増加、農家件数の減少と生産額減少を同一の土俵で語るのはどうか?であり、全く異質の問題です。農業放棄地の環境への影響や国土保全との関係については、また改めるとして・・・。あえて問題となるとすれば、それなり(これがあいまい)の規模で農業を営むものたち、大規模ではない専業農家、いうなれば私達のような立場で農業生計をたてている全体の1割の存在の処遇なのです。大規模経営に参画し農家同士の経営統合を図るのか?新たな集落農業の道を選択するのか?また別の事業に生計の糧をもとめるのか?いわゆる付加価値農業・6次産業化農業への参入ですが、ここをどう対処するかは、一番難しい問題かもしれません。

ともあれ、当面の課題は現状にそくさない農業政策と立ち遅れた現状農家の経営システムと雇用体制です。将来的に国として(今の日本の無能な外交政策では)TPPなど自由貿易は避けて通れないでしょう。また、そうでなくても、日本農業の国際競争力の強化や若者の農業雇用進出など近未来の農業設計を考えるには過渡期なのかもしれません。更に一歩踏み込めば戦後JAの部分的解体や農水省改革も必要かもしれません。

次に、政策の課題としては、まずは地域・農業規模・農家ごとになすべきことの方向づけを厳格にすることであり、それには農業形態としてのマクロ農業とミクロ農業の選別と区分けをすることが必要かと考えます。マクロ農業の確立のためには、効率的な平地での大規模農業推進のための技術支援や大規模農家間の更なる統合・経営強化が急がれますし、安定した食料自給生産のための、意欲ある農家への経営規模拡大のための安定化支援と助成、農地の流動化を推進することです。更には助成金ばら撒きをやめた兼業農家の集約と組織改革といった政策指導も必要です。ミクロ農業で言えば、中山間地における農業に採算効率を求めることは難しい、、、ならば中山間地農業の及ぼす多面的多機能的価値を認め文化農業、環境農業として小さな農業を守ることをコンセプトとし、新たな環境税などを財源とした環境政策の支援・実施をするのだということをはっきり国民に説明し理解を得ることが大事だと考えます。

いずれにおいても、今後は中長期における農業ビジョンを明確にした段階的な政策に取り組むことが欠かせません。農政の蛇行や寄り道は農家にとっても国民にとっても悲劇以外何ものでもありません。これを機に戦後農業政策の誤りを国も農家も認め、真摯に現状に向き合わないといけないと思います。ここで誤解してほしくないのは、けっして現段階で自由化を推進すればいいというものではないということ。ビジョンなきご都合主義の政策の急激な転換は混乱と現状農家の生活環境を悪化するだけですから。私自身、その点では大きな不安を抱いているのも正直なところです。ただ、肝心なことは、今後のしっかりとした農業構築のビジョンを持った上での数年かけた段階的な農業改革や政策が、日本農業の体質を強くするということであり、次世代を託す若者へつながるということです。いつまでも日本農業を弱者化していても、若者農業者達の将来に希望はありません。時代の変化に惑わされず、農家それぞれが自立の理念を持つことが大事ではないでしょうか。また、続きは後ほど・・・

ここまで読んでいただいた方へ・・・
まとまらない話に長々とお付き合いいただいてすみませんでした


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この記事へのコメント
農業と輸出産業の問題だって?w

メディア(政党機関紙除く)の論調は、経団連主導ですべて一緒。
「農業を開国せよ」。

でも、農業なんてTPPの実態のほんの一部。槍玉に挙げられているだけ。
うまーく、世論をつくられてるね。

TPPアメリカの真の狙いは
http://www.youtube.com/watch?v=aV4fmGVP3kw&feature=channel
政府の「伝聞情報」ではなく、
アメリカ通商代表部と農務省へのTPPの質問からアメリカの真の狙いがわかります。

そろそろ、メディアの情報の読み取り方を考えないとですね。

.
Posted by TPP at 2010年12月23日 12:38
TPPさん こんばんは

コメントありがとうございます
なるほど、TPP問題に隠された本当の意味
あくまで農業の市場開放に言及されていますが、それは表向きの話ですか・・・
今回私は農業人として、TPPウンヌンというより日本農業のあり方や農業政策についてどうかということを書いたつもりですが、ことこのTPP問題となると奥が深いのですね
米国における農業と郵貯・簡保のワンセットでの参入の話までは聞きましたが金融や介護、医療、公共事業、通信事業etsを含めた市場開放の問題となるとこれは全く別の次元の話になりますね

多分、多くの国民はこういった情報を知りえていない、、、
随分と危険な話ですね
本来の意味で日本の国益はどこにあるのか?真剣に問わなければいけません
Posted by 水窪 at 2010年12月23日 23:58
レス、ありがとうございます。

実は私は農業問題にも間接的にですが関わっており、今回のTPPの問題にも関わっています。

勉強しなければと思い、色々と取材を行った結果、リンクした小野寺議員のコメント辿り着きました。

でも、おかしいですよね。
なぜ、メディアは全貌を明らかにしないのか。
「握り」があると思います。

そもそも、TPPは、アメリカが輸出先として日本の門戸を開放しろと言うのが、本丸です。そのために、日本以外の国と結託している。わかりやすく言うと、「日本包囲網」です。

アメリカを除く8カ国のGDPは、たったの3.2%。内需で算出し直すとわずか0.1%になってしまう。輸出産業も潤わないです。オバマ大統領の「5年間で、輸出を2倍にする。そのためには、TPPを活用する」という発言が、アメリカの意思を表しています。

アメリカの失業率は約10%。非正規雇用者を含めれば17%と言われています。魅力的な輸出先にはならないです。

アメリカは、ドル安政策を主導しつつ、TPPが可決されたらさらなるドル安に誘導すると思われます。なんとしても輸出、って政策です。

つまり、農業だけでなく、日本という国のあり方を問う問題であるはずなのに、マスコミは取り上げないですね。

農業に従事している方々も、農業以外の側面でTPPを切り崩すきっかけをつくっていただけると、大きなうねりになる気がしています。

いやぁ、本当に日本の命運がかかっていますね。

雇用が崩壊します。
Posted by TPP at 2010年12月24日 01:48
TPPさん おはようございます

日本農業は確かに国際間競争や自国の安定自給を確立するために足腰を強くし、明日の農政のビジョンも確立し、そして将来にわたり自立しないといけない・・・TPPがどうのこうのとは一線を隠した議論であり、これは書いたとおり持論です。

しかし、今回のTPP問題のように隠された裏の真意があり、国益が著しく損なわれる、いや日本のあらゆる市場に混乱と雇用に損失を及ぼすとなれば、これは大問題ですね。しかも、その事実を国民が正確に知りえないのは多大な国民の不利益であり、ある種の恐怖ですらあります。

小野寺さんや田中さんの言うとおりなら、それこそ農業市場開放どころの話ではありません、日本経済そのものの崩壊です。

尖閣の問題といい、今回のTPPといいマスコミも含めこの国の情報公開はどうなっているのでしょうか?問題の要旨が見えなければ正しい議論にもなりません。憤りを感じますね・・・

私達、農業者も市場開放の御旗に踊らされず、しっかりと本質を見極めていかないと、それこそ行く末は日本農業の崩壊です。
Posted by 水窪水窪 at 2010年12月24日 08:48
水窪さん こんにちわ。
食糧自給率他、これまで全く知らなかったこと色々教えられました。
有難うございました。
Posted by クライネマン at 2010年12月26日 16:23
クライネマンさん こんばんわ

私自身もまだまだ勉強中ですが、さすがに自分の仕事・生活を左右されることですので気になります。

ただ、コメントをいただいたTPP さんのお話しにもあるように、この問題にはいろんな国の思惑や事情が入り乱れており正確な情報を得ること自体が難しいのが現実のようです。

このTPPを含め私達農家はずっと国の都合による政策に振り回されてきましたが、そろそろ目を覚まし、しっかりと自立への道を歩かないといけないですね。
Posted by 水窪 at 2010年12月26日 21:23
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